ライフ
2020.01.07
手帳の認定基準が変更されているのって知っていますか?
この記事のポイント
- 2016年4月よりの見直された内容は?
- 2015年に見直された聴覚障害認定方法、ペースメーカー・肢体不自由(人工関節等置換者)認定基準変更のおさらい
- 時には世論の声の影響も…?
手帳の認定基準ですが変化がないというものではなく、時代の移り変わりとともに変更がなされ、毎年4月に変更されています。まずは昨年の4月の認定基準の変更点からご紹介します。
ペースメーカー・肢体不自由(人工関節等置換者)認定基準変更
- 1,ペースメーカ等を入れた方(心臓機能障害)
一律に1級に認定されていましたが、1級、3級、4級のいずれかに認定されるようになりました。
- 2,肢体不自由(人工関節等置換者)
「股関節・膝関節」一律に4級に認定されていましたが、4級、5級、7級、非該当のいずれかに認定されるようになりました。
「足関節」一律に5級に認定されていましたが、5級、6級、7級、非該当のいずれかに認定されるようになりました。
ペースメーカー・肢体不自由に関しての変更は、議論上医療の進歩による負担の軽減が背景にあるとされています。
続きまして2016年4月には、肝臓機能障害、呼吸器機能障害及びヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の認定基準等の見直しがおこなわれ、変更されました。まず、肝臓機能障害については3点見直しが行われています。
- 1,肝臓機能障害の認定基準等の見直し
認定対象が拡大し、国際的な肝臓機能障害の重症度分類であるChild-Pugh(チャイルドピュー)分類の3段階(A・B・C)のうち、これまで認定基準の対象とされていた分類C(10点以上)に加え、分類B(7点以上)も対象となりました。
- 2,身体障害者障害程度等級表の要件緩和
血清アルブミン値、プロトロンビン時間、血清総ビリルビン値の項目のうち1項目以上が3点 ⇒ 肝性脳症、腹水、血清アルブミン値、プロトロンビン時間、血清総ビリルビン値の項目のうち肝性脳症又は腹水の項目を含む3項目以上が2点以上に緩和されました。
- 3,再認定が必要に変更
Child-Pugh分類B(合計点数が7点から9点)の場合、1年以上5年以内に再認定が必要になりました。
これらの見直しは旧制度の認定基準が厳しすぎたという議論から行われました。薬害肝炎全国原告団および日肝協が声を上げ続けた結果、行政も重い腰をようやく上げた形です。
その中でChild-Pugh(チャイルドピュー)Cで認定された障害者・患者の7割が3年以内に、Child-Pugh(チャイルドピュー)B患者の3割が死亡していたというデータが示されたのです。つまり、死に至る重い障害に苦悩している方々の一部にしか、障害であると認定されていなかった、交通費の減免などの恩恵を受けることができていなかったということです。
この認定対象拡大は肝臓機能障害に苦しむ方々の一助になると言えるでしょう。
次に、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能(HIV)障害の認定基準等の見直しについてご紹介します。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害は認定基準の疑義解釈の見直しが行われ、再認定を要するという文言が削除されました。また、呼吸器機能障害については認定するにあたっての測定方法が見直されました。
余談ですが・・・
皆さんは全ろうの作曲家とゴーストライターによる騒動を覚えていらっしゃいますか?あれだけ世間を騒がせれば、詐病について行政も動くというものです。その際に聴覚障害認定方法の変更がされました。
- 聴覚障害に係る身体障害者手帳を所持していないものがいきなり最重度の認定を受けることはほとんどないことを受けて、その場合にのみオージオメータだけでなく、ABR等他覚的聴覚検査等を実施することが義務づけられました。
- 指定医の専門性を担保するために、聴覚障害に係る指定を新規に指定する場合は、原則として、日本耳鼻咽喉学会専門医を要件としました。
医療の進歩と福祉財源の縮小等、様々な要因により今後も認定基準や認定方法は変更されていきます。
障害者雇用に携わる方々の知識として、今後の予測される変更を持っておくことをおすすめします。
(参考)
肝臓機能障害、呼吸器機能障害及びヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の認定基準等の見直しに関する通知改正等(厚生労働省)
心臓機能障害(ペースメーカ等植え込み者)及び肢体不自由(人工関節等置換者)の認定基準の見直しに関する通知(厚生労働省)